日本の荒れた山賊の話はなぜこんなに魅惑的 坂口安吾 ちくま日本文学 筑摩書房
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桜が咲く前に「桜の森の満開の下」が読みたいな、と思ったのに、読めたのは5月も中ごろという。
「桜の森の満開の下」に「堕落論」「白痴」が入っているものを、となるとこの本になりました。
昔谷崎潤一郎を読んだ記憶があるちくま日本文学です。
堕落論と白痴は学生時代に読んだのですが、当時よりも味わい深く、楽しく読み終えることができました。
読むのには若すぎたのか。最近戦争関係の本を多少は読んだので、心得が違ったのか。
(あまりにも知らない。 だからできることは知っていくことしかない。 「昭和史が面白い」半藤一利 文春文庫)(一気に読ませ、そして、あとがきに至るまで泣けなかった。「流れる星は生きている」藤原てい 中公文庫)
小説と随筆が混ざるなか、「石の思い」「風と光と二十の私と」での学生時代・代用教員の思い出話に沿って出てくる、白痴への思い、堕落への背景。それが戦中、戦後の「日本文化私観」「堕落論」「白痴」に結実するのでしょう。
「桜の森の満開の下」は初めて読んだのですが、芥川といい、日本の荒れた山賊の話はなぜこんなに魅惑的なのでしょう。桜の下に大勢の人が集まるのは、無人になった時の桜の力を怖れるかのようですね。
この作品を読む前と読んでからでは、桜への対応方法が変わってくると思います。来年の春は、一人で桜の下に行けないのでは。
ああ、思い出した。カレカノで出てくる話だ。
この漫画を読んだ当時に読みたいなと思っていたのに、実際読むのには15年ほど間が空いてしまいました。
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