日本の敗戦を感じる 火垂るの墓 野坂昭如 新潮文庫
黒い福音(ドラマ見た方も楽しめる 黒い福音)に続き、
日本は敗戦国なのだ、と感じさせる一冊。
黒い福音よりもはるかに、戦争色が強い作品集でした。
火垂るの墓は映画版を何度も見ていますが、まさにこの文章を
そのままアニメーションにしたものだ、と冒頭びっくりしました。
原作の野坂さんが試写を見て号泣されたというのがわかります。
短い短編ではありますが、映像化するには、これくらいの短さで
十分なんだな、と感じます。
藪の中だったり、萩尾望都さんの作品とかも、ごく短い短編で
深い物語が紡がれていますから。
そして、野坂さんの作品を読むのが初めてなのですが、句点が
極端に少ない、読点「、」でたたみかけるような文章。
どうしても語りたい、語らないといけないという強い意思を
感じるような文章です。
最初はうわっと思ったのですが、読み進めているうちにこの文章の
リズムに引き込まれている自分に気づきました。
実際の体験を元に、パラレルストーリーがいくつも分岐して、
様々な小説世界が作られている一冊です。
薄いけど、読みごたえは十分でありました。