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強烈な違和感の存在を心に留め置くことに「由熙 ナビ・タリョン」李良枝 講談社文芸文庫

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平成元年、しかも第100回の芥川賞受賞作。

平成になって1週間くらいで発表だったみたいですね。

冒頭ナビ・タリョンという作品が李さんの生き様を表す基本の作品。両親の離婚調停、長兄が医療ミスのような形で動けなくなり、次兄が突然死。

生まれも育ちも日本である主人公はルーツのある韓国へと旅立ち、そこで韓国の踊り、歌を習う。

街並みで歌い踊るラストは愛子自身がナビ・タリョン、嘆きの蝶であるようです。

続く「あにごぜ」「由熙」も同様に、きょうだいと、ルーツと日本との狭間で居場所を探し傷つく主人公たちの話なのですが、「かずきめ」だけ異色な、この本の中では小説色の強い話で、美しくも病的な姉の生きざまが強烈でついついページを行きつ戻りつしながら読みました。引き込まれました。

最後の芥川賞受賞作の「由熙」は韓国に留学しソウル大学と思われるS大学に通った「由熙」ユヒが、韓国になじめず、頭では理解できてもそれを使えないとか、感覚として、五感で韓国の違和感を感じざるを得ない辛さが書かれた作品で。
日本にいても恐怖に震え、韓国に行くと日本に馴染んでいる自分をいやというほど痛感し。

そんな李さんが居場所を求めるための求道は、日本語で文学を記すことだったと、由熙でもエピソードとして日本語の原稿が出てきます。

それが結実したのがまさにこの本なわけですが、巻末、年譜を見ると芥川賞受賞から3年後、軽い風邪の症状を訴えてから4日で急死しているのです。

兄2人に続き、お姉さんまで急に亡くしたこの李さんの2人の妹は、親御さんは、と思うと胸が締め付けられます。

人生がまさに、小説になるべくしてなっているような方ですが、他の方がたは、今も続く違和感と共に過ごしているのです。日本で、韓国で。

この本を読むことで、その強烈な違和感の存在は、心に留め置くことが出来ると思います。

まずは知るために、手に取ってみて読んでみてはいかがでしょうか。

そして

また、読みたい本たちが。

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