軽い気持ちでいろいろとためになる「取るに足らない事件」早川いくを バジリコ株式会社
前知識一切なしに、タイトルと表紙だけ見て読みました。
戦後、昭和20年代の新聞記事をひたすら読みに読んで、「取るに足らない事件」を集めたという本。
いわゆる三面記事本でした。
昭和二十二年末、強盗に入られながら
おれたちも引揚一家で五人の子供がある。その冬着を取られては冬が過ごせない。返してくれ
と火をおこし熱いお茶を出しながら6時間ほど話し、犯人たち自首。翌日警官とその家を訪れると、なんと白米めしのごちそうを犯人たちにふるまうとか泣ける話や、
今話題の仏像へのいたずらではないですが、国宝如意輪観音を盗んで損壊させたその理由が
如意輪観音を見て手首が六本もあるのにムカムカして二本もぎとった
という金閣寺焼いた彼も、仏像に油をかけた(と思われる)海外在住の医師もびっくりな話などなど。
直前に「日本のいちばん長い日」を読んで、感動したのは事実ですが、ここに出ている人たちは特別待遇で、こちらの本に出てくるみたいに食べるものに困って、という世界とは別次元で過ごしていたんだよな、という視線で見てしまうのもまた事実。こういう一般市民を山のように犠牲にしておいた上での成果が敗戦、ということを忘れてはなりません。
さっととった割には、非常にバランスのよい見方ができてよかったな。
あとは、巻末の「マッカーサーはノッペラボー」というコラム部分も収穫。彼が日本に来て行ったこと、更に日本の婦女子をはじめとする市民からどのように思われていたのかということ。そしてどうして日本から去ることになったのか。20ページ弱でまとまっているので非常に参考になりました。「マッカーサー道路」って最近よく通るのですが、これアメリカに帰ったマッカーサーに感謝して銅像、マッカーサー灯台、道路、スタジアム、さらに神社まで計画されたらしいんです。マッカーサーが指示した道路じゃなかったのね。
軽い気持ちでいろいろとためになる本でした。
<関連記事>
- 日本の敗戦を感じる 火垂るの墓 野坂昭如 新潮文庫
- 「日本のいちばん長い日」半藤一利 文春文庫
- 現場現物現実ってこうやって確かめるんだ 「平塚八兵衛の昭和事件史 刑事一代」 佐々木嘉信 新潮文庫
- 「正義」は個人に宿るもの 是非読んで頂きたい 桶川ストーカー殺人事件 清水潔 新潮文庫