線だけの作品で、ああ、読みたいと思わせた102歳の書家・画家の30年エッセイ。「桃紅百年」篠田桃紅 世界文化社
女性誌を見ていたときだったかな。
103歳の書家のインタビュー、ということでそれは普通に読んでおりましたが、
線を見て、ああ、この方の本を読んでみたいと思いました。
筆を紙に置くときの入射角、そこから力を溜め、一気に引いた線。
美しい線でした。
文字というのは、いや線を引くだけでも、その人の人となりが表れてくると思っています。
この本は時系列をなぜかバラバラにして、33年を3つのパートに分けて、随筆が続いていくというもの。雑誌連載だったのかしら,
30年以上前の、スタート時に、既に66歳なのですよね。そこでも、今でも、文字、というより「かたち」に対するイメージを文房四宝を手に世界につくりあげようという熱を持ち続けている方。
その逸る気持ち、一心不乱な気持ちを抑えるため、目標はあまり立てなかったり、団体に所属せず、当時の状況からするとびっくりな単身渡米。そして家族を作らず過ごすお姿はしなやかで、竹のようと評した感想もまさに納得。
最後の最後、「健康法」と題された部分が素敵。
我儘にしていて、やりたくないことはやらないようにしていること、ぐらいで、特別に健康法ということはしていないのです。
心の方の空気も上等のものを吸いたいと、よき人を知りたい、よきものを読みたい、よき物に触れたい、よきかたちを見たい、よき音を聴きたい、と、希いだけは失いません。
いやなものを排し、よきものをとり入れる。単純だけど、この積み重ねをきちんと行い歩みを進めていきたいですね。