日本は殺人天国に見えちゃう「そして殺人者は野に放たれる」日垣隆 新潮文庫
新潮ドキュメント賞を受賞したという作品。
殺人者が野に放たれるー
このインパクトがあるタイトル。どうして、殺人者が野に、すなわち日常暮らすこの街に放たれるのか。
精神障害犯罪。
マトモに判断ができない状態の人が犯した罪は、罰せられない。不起訴になって、懲役刑になるわけでもなく、ちょっと入院して、世間に出てきてしまうという問題についての本です。
減刑するための精神異常テクニック
このからくりを聞いて、理解できたのが山口県光市の母子殺人事件での出来事。
参考:裁判官は、あなたたち被害者に会う義務もないし、あなた方が裁判官に会う権利もない「なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日」門田隆将 新潮社
この事件は私が小学生の時に、「弁護士とは、正義とかけ離れた職業だ」と思ったきっかけとなるオウム事件の弁護士を務めた人が犯人の弁護につきまして、それで犯人は
「ドラえもんに助けてもらおうと思ったから」
みたいな頭おかしいこと言い出すんですわ。
でもこれ、頭おかしく見せたいんだなと。
判断力がない人間がやったから、死刑にしないでねという策略だったのでしょう。
この本にも、そのからくりを理解し、わざと覚せい剤を利用してから奇行にはしり、人を2人も惨殺しておきながら、無期懲役になってしまったんですね。この本では実質18年程度で釈放されると書いてあります。
あと2年で出てきちゃいますよ!
日本は殺人天国に見えちゃう
海外と違って、日本は精神犯罪者のその後の措置施設がなく、精神病院に入れておくしかなく(そこでも殺人がおきちゃったり)退院しちゃったらまた殺人・・・の繰り返しということ。
それは逆に言うと殺しても死にたくなかったら、殺す前に酒を飲む(この本にも出てきた新宿バス放火事件の犯人も酒飲んでから火をつけていた)、覚せい剤うつ、殺した後精神おかしくしちゃった感じで判決まで通すという手段を取ればいいというところが怖いですねという話。
参考:死へ反抗する執念から作られた本「炎を越えて 新宿西口バス放火事件後三十四年の軌跡」 杉原美津子 文芸春秋
個人的には、予防拘禁は無理だとしても、一回犯罪犯しちゃった人に対しては、精神疾患があろうとなかろうと罪に対して懲役を科して欲しいし、死刑になったら半年以内に執行してもらいたいのです。それが罰だから。
執念の本なれど
ノンフィクション本なのに異質な感じをずっと感じておりました。
通常、著者はその自分の思いを一歩抑えて、極力俯瞰して書くと思っているのですが、この本は著者の思いが前に出る出る。
それは著者の方の個別事情もあるのだ、と本を読んでいるとわかります。
しかしながら、この記事を書くにあたって、ちょっとネットで調べてみると大変なことになっているわ。
様々な、まとめサイトに出ている情報を見てしまうと、疑義が差し込む余地が出てきてしまうなぁ。
こういった見方がある、という情報として、とらえておこうと思います。読んでよかったと思います。
そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)
8月15日読了
ヒロセマリでした。
参考記事
裁判官は、あなたたち被害者に会う義務もないし、あなた方が裁判官に会う権利もない「なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日」門田隆将 新潮社