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犯人は、逆にこの本の著者を 逆恨みしているのでは 「心にナイフをしのばせて」奥野修司 文芸春秋

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時期的に川崎の事件といえば、中学生殺害が嫌でも浮かんでしまうでしょうが、
川崎の駅より南部(海側)の人たちとこの本の事件となっている東名高速周辺の
人たちはもう文化圏が別。

最近の川崎の事件は女子高生コンクリート詰め殺人事件の方のような
いわゆるドキュンな集団が盛り上がってタガが外れちゃった犯罪の
グループに属するとすると、
この高校生首切り事件はその死体の扱いのショッキングさにおいて
酒鬼薔薇事件と対比されるのはまあ納得であります。

表紙のイラストが相まって、ノンフィクションでは変わった手法を使ったのが
悪目立ちしてしまいもったいない、と思うのですが著者の奥野さんの
お子さんが描かれたイラストとなると強く言えないですね。

少年法というものに阻まれて、この本の多くは被害者家族のその後に
焦点が当てられている。

被害者の妹が語る

兄はグループの中では一番いい子に見せようとするところが
ある弱い人だから殺された

という見立てはいいところをついているのでは。
本当は被害者よりもそのグループの友人とされる人たちが悪質で、
それが表に出てきてない、決して出さないという可能性があるかもなと
思ってしまった。

そう考えると被害者生徒はとにかくかわいそう、であるはずだが
この本を読んでいると、被害者生徒の母親の偏執的なところ、
お嬢様育ちでストレスを許容できず、被害者に自分の希望を
全て委ねていたところが、被害者を苦しめ、それが加害者に何らかの
影響が及んだのではないかと思えてくる。

犯人は少年法のもと、前科扱いにはならず弁護士になり、
親が払わなかった示談金のことを
「金がないなら50万なら貸してやる」と被害者の親に語るほど、
自分の起こしたことに対して悪いという意識はない。
犯人の善悪の意識は「父親が了承したことは善、それ以外が悪
という認識しかなく、一般的な善悪基準がない」と犯行後に診断されており、
父親が払わなかったものは払わなくてよいと考えているのでは。

こんな犯罪を犯し、一貫して自分が悪いという意識を持てない
自己中心的感覚の人間が反省したり、相手の事を忖度することはできないはず。
それは犯行後の精神鑑定でも言われていた話。

酒鬼薔薇事件関連で読んだ本で、

あれだけの事件を起こした人間が、
正気というものを手に入れ、普通の人間の感情を手に入れたら
即自殺するか発狂する

という専門家の意見が印象に残っています。
自分の犯罪、悪さには気づかず、ぼんやりとした認識で死ぬまで過ごすのでしょう。

この本がきっかけで弁護士を廃業したという犯人は、逆にこの本の著者を
逆恨みしているのではと思います。

自分が相手にしたことは悪くなく、自分にされたことは過大に取るという
基本構造は、弁護士になろうと変わってはいないでしょう。

継続的に注意していきたいところです。

しかし黒い福音でも描かれ(割と悪い組織よ)、こんな事件が起きて
葬儀もさせてあげなかったこのサレジオに
今でも子供を入れちゃおうと考える親がいて学校が成り立っている
っていうのは宗教上の理由を除いたら
親が両事件のことを知らないんですかね?ですよね?

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