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男の小説、を感じた 利休にたずねよ 山本兼一 PHP研究所

千利休、豊臣秀吉といった歴史上の人物を一人称にしながら
10数ページの単位で、利休切腹の時から徐々に過去に遡っていく物語。

冒頭、険悪を極める利休と秀吉が、あるところから過去になると、
急にお互いを認め合うようになっていきます。

つまり、お互いの力を誇示しようと貪欲になった瞬間に、
双方が邪魔になったということ。

古溪宗陳が語っている三毒、貪欲、瞋恚、愚痴、すなわち
むさぼり、いかり、おろかさという炎に包まれて逃げられない人たちが
数多く出てくる本です。

利休がずっと懸想している女性について、
エピソードがラスト前に出てきたのですが、
利休が手に入れることが出来なかったから懸想しているんだなと。

茶の湯の世界とと一緒で、不完全だから美しい。
普通に手に入ってしまったら、その瞬間に利休は興味を失ってしまうはず。
そう考えると、利休は幸せになれない人だよな、と思います。

女性の視点からすると、女性が良くて茶器と同等にしか扱われていない
世界はちょっと嫌だなあ、登場している女性は幸せじゃなさそうだもんなぁ
というちょっと微妙な世界でありますが、それが戦国時代なのかなとも思いました。