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朝井さん、それはずるいわー!「武道館」朝井リョウ 文藝春秋

この作品が作られたきっかけとなる武道館のコンサートに私も行っていて、朝井さんよりも熱烈なファンである(敢えての断定)私としては、まぁいろんな事が浮かんで、文脈を追いながらも脳内があらゆる事を思い出したり考えたりが止まらない。

武道館に至るまでの秋ツアー、メンバーと同じくらい回り過ぎて、MCでいじられるくらいになった私たちはおそらくこの本で登場人物に一番近いのは「サムライ」だ。気を付けなきゃなぁ、という思いにもなった。

アイドルをテーマにしつつも、インターネットとの距離感、みたいなものについてもああ、そうそうこういう感覚あるよねと感じたのがここ。

突然、頭の中に、あらゆる動画が、自分を中心にして大きな円を描くように並んでいるイメージが浮かんだのだ。すべて、自分から、等距離にある。腕を伸ばして一回転すれば、すべての動画に触ることができてしまう。

つまり、この中で一番、が、ない。

P90

こうではなかった時代を知っている私も、何かが失われたその後に生まれ、何かを感覚的に知らない世代のはず。

それが本当に必要な事なら、時代が経てば淘汰されて、昔のように戻るのか、なんて「いとしの未来ちゃん」みたいな未来を思ったり。

この「一番」ではない、っていうのはアイドル側の人もかつて言っていたことで、そんな中「自分が良い」って言ってくれた人と結婚したっていう事を聞いて、我が身の無力さと、それと同時に傲慢な身分に思い至る事があったのだ。

私が出来ることは、人として、誠意を持って、真っすぐに、好きな人に対して一番に動くこと。あたりまえのことを、愚直に活動するという自分の信念に立ち戻りました。

個人的には、ラストシーンで初めて、愛子の夢が・・・と感動してしまいました。この作品のきっかけとなった、色とりどりに輝くサイリウムに囲まれた武道館、あそこにはこんな作品を生み出す力が確かにあったのだ、とも思い直しました。

ドラマ化していて2話目から見てましたけど、ドラマにしちゃうとこのあたりの文学的感覚の落とし込みは難しいですな。


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ちなみに、ドラマでNEXT YOUを演じたのはこの作品で「fruits=fruits」ともじられていた「juice=juice」なのですが、マネージャーが高畑裕太で今後見るのは難しいか・・・と思いながら小説読んでたら、プロデューサー役の小出恵介が事件に。やだタイムリー。

最後に、朝井さん、「尾見谷杏佳」はずるいわー!

ヒロセマリでした。

武道館

6/10読了

参考記事

私設ファンクラブに入ったのか朝井さん 「スペードの3」朝井リョウ 講談社