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忘れ去られるべき人たちのことを多くの人の心に残す本「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」佐々涼子 集英社

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たまたま表紙を見て、読んでみたいなと手に取った本。

開高健ノンフィクション賞受賞作でした。受賞作一覧を調べようと思っていたのでちょうど良かったです。

海外で亡くなった方がどうやって取り扱われるのか。どんなビジネスが介在してくるのか。その逆もしかり。葬儀に関しては、「おくりびと」の映画を見たくらいの知識しかありませんでしたので、ためになりました。

知識的にも有益なものがありましたが、内容的には心情を深く揺さぶるもの。「エアハース・インターナショナル」で働く人の仕事を丹念に描きながら関わる死者とその遺族の話を伝えてくる。海外で亡くなるということは、それから時間が経っても遺族にとってはナーバスな話で取材が難航する。その部分も、作者佐々さんの死の体験を交えながら書かれていきます。

この職業についた人たちは、遺族と一時、物凄く濃密な時間を過ごします。家族の遺体を送還してくれるだけではなく、出来得る限りすべての事を遺族にして差し上げ、支えになります。それだけに、この人たちを見ると、思うと、死がどうしても思い出されてしまう。なので、ある一定の期間を過ぎると、忘れられるそうです。それを社長の利惠さんは、

私の顔を見ると悲しかった時のことを思い出しちゃうじゃん。だから忘れてもらったほうがいいんだよ

と話します。

そんな忘れ去られるべき人たちの事を、本に書いて下さったおかげで、私も、他にも多くの人が、こんな人たちがいるんだと心のどこかに留め置くことが出来ると思います。

ノンフィクション作品の価値を改めて認識し、佐々さんの著作を調べると石巻の製紙工場の東日本大震災後の本が新しく出版されておりました。

是非、そこで生きる人たちの生きざまを見させてもらいたいと思いました。

海外旅行の際は保険をきちんと確認しよう。