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和子の即興でも崩れない精密さを垣間見る 「和子の部屋 小説家のための人生相談」阿部和重 朝日新聞出版

阿部和重氏のシンセミアが大好きな私。
グランド・フィナーレまでの著作は大体読みました。

が、それ以降の作品はあまり手を取っていなかったのです。
しかし気になる作家では居続けておりました。

この本は、そんな阿部さんが「和子」として、小説家の悩みに
対して即興で回答を出していくという対談集です。

女性作家の中で気になるのはもちろん「川上未映子」さん。
のちに、結婚する相手なんですよね。
芥川賞作家同士の結婚は初めてだったのかな、2組目かな。

それでお子さんもいるとなると、その子の文筆の能力というものに
今から期待をしてしまうわけなんですが、
この対談は川上さんには夫がいるので
まだ付き合ってはいないのかな、
でもいい感じなのかなと勘繰りながら読みました。

そんな下世話な話をさておくと、作家の方というのは本当に
書くことが好きで、辛くて、嫌になっちゃいながらも書くことを
やめられない人たちなんだなというのがひしひしと伝わってきました。

言葉に対しての執着心、対象を言語化することに、ここまで
意識的なのだな、ということを、周りの風景の描写の変換を見るだけで
感じてしまいました。

そんな女性作家に対しては、阿部さんはちょっと違うのかな。
映画的というか、自身でもおっしゃるようにコンセプト命、
構成を組んで組んで組んで、それを言葉に変換していくという
感じがするので、物事に対して距離感がある。
俯瞰して見渡せるので、女性作家へのずばっとした回答が、
しかも即興でできるのだなと納得しました。

シンセミアとか本当に映画的なんだけど、実写映画化しないなぁ。
「映像化できないと思っていたこの作品が、いよいよ映画化!」
みたいなことにいずれはなると思ってるのですが。まだ先ですかね。