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何か不安が残る、けど面白い「コンビニ人間」村田沙耶香 文藝春秋

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いやぁ、面白かったなぁ。

コンビニという世界の中ではマニュアル+αで動ける人

主人公は普通の世界では、普通の人たちの気持ちが全く分からない。自分なりのルールでものごとをとらえ、解決しようとすると大事件になる。

ゆえに、そういった判断を妹にゆだね、本当の自分を奥にしまって、それをマニュアルとして生きている。

そんな彼女が通常のマニュアルを逸脱して「読める」人として生きていけるのがコンビニエンスストア。

さすがコンビニで勤務しながら芥川賞受賞しただけありまして、その描写はまさに、流れるようにコンビニの音、空気、視界といった状況から様々な判断を下します。

それは決して通常のマニュアル人間では対応できないレベルなのですよ。

コンビニで、コンビニの世界でこそ人間らしく動いていける彼女はまさしく「コンビニ人間」。

自分のまわりにもいるのかもしれない

私は人と好き勝手話しつつ、さして興味のない人には当たり障りのない会話で時間空間を埋めることがありますが、その相手が私に準備している返答、それがあらかじめ準備された仮の答えである可能性もあるわけですよね。

まぁ、学生時代の同級生とか限りある人しか会わないからそういう人と話す機会もないかしら。

白羽さんはややつくりものっぽい気がするが、致し方ないか

彼女の環境を変えるきっかけとなったダメ男、白羽。

ダメっていうかクズっていうか口ばかりの人。

縄文時代と今比較しつつまわりのことを卑下しながら、一番まわりの人に卑下される人、卑下されるべき人ね。

なんか作り物テンプレートからとってきたようだけど、中年童貞(参考:日本を、プライドがだめにする。「ルポ 中年童貞」中村淳彦 幻冬舎)を読むにそういう人がたっくさんいるわけですね。

こういう人がコンビニバイトにいたのかな。

会社で働いていると、バイトの人と関わらないからそういう感覚がちょっと離れてるのですが、今の日本に、そしてこれからもこういう大人がどんどん増えていくという。やだこわい。

彼女自身は幸せになるだろうけど、何か不安が残る、けど面白い

選評でも書かれているように、芥川賞受賞作でこんなに笑えるような作品って珍しい。

この世界が、この人の未来は一般的に幸せなのかはわからないけど、コンビニエンスストアは向こう20年30年では無くなりそうにないので、彼女の体、肉体の方に問題はない限り彼女は幸せな日々が送れると思います。

彼女のような人が日本にたくさんいると思うと不安になってしまう人もいるかもしれませんが。

村田沙耶香さんの作品はじめてだったから他にも読んでみようかな。


ハコブネ (集英社文庫)


タダイマトビラ (新潮文庫)


授乳 (講談社文庫)


マウス (講談社文庫)


星が吸う水 (講談社文庫)


ギンイロノウタ (新潮文庫)

ああ、このギンイロノウタは、雑誌で見たかな、この時から村田さんという作家がいると認識したのか


殺人出産 (講談社文庫)


しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)


きれいなシワの作り方~淑女の思春期病

マガジンハウス、この表紙・・・アンアンとかに連載されたエッセイの単行本化てきなやつかしらん?人となりを手っ取り早く知るにはいいわね。


消滅世界

コンビニ人間は、あんまり小説読まない人でもとっつきやすく読めるかな?と思います。

7月25日読了。


コンビニ人間

ヒロセマリでした。