想像力がもつ破壊力に、完敗 「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男 文芸春秋
トヨザキさん激推し、の印象が強かった本。
その記事から何年経つんだ、と調べると8年ですね。
8年気になっていて、ようやく手に取りました。
世界を、歴史を、自分の中で知り、解釈し、その凝縮で
自分の世界を本の上に作り出している。
余りにも独特な文体で。
イヌに語り掛け、イヌが「うぉん」と答え、
語りはじめ、また、文章が、単語と、句読点と、独特なリズムで連なる。
例えば
それでも雪が残るのは峰々においてばかりで、
谷には清冽な真水がほとばしり、地面には草が
いちめんに繁った。つねに露に、びっちょり、濡れながら。
といったかたちで。
それが様々な時代、20世紀を生きたイヌの場所、時代を
行き来していくので
巻頭のイヌたちの系図をどれだけ見返したことか。
最後、文庫版のあとがきを見て驚愕。
この本を、「想像力の圧縮された爆弾」として創るにあたり、
歴史に挑んだのだという。
元々歴史の知識が多分にあって(もちろん、おありには
なったのでしょうが)
その得意分野だから、書くのではなく、創作のために
歴史に挑むという姿勢。
想像力がもつ破壊力に、完敗しました。
古川さんの本はgiftに次いでまだ2冊目なので、
次は「聖家族」読もうかな。