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書面を手に持って空想を膨らませる図式が浮かぶ短編集 水の肌 松本清張 新潮文庫

短編集の中に「小説 3億円事件」が入っていることから読みました。
水の肌、はて、何か見覚えのあるような・・・と思って読み始めると、
そう思った理由がわかりました。

冒頭に掲載されている短編が「指」。
この作品がドラマ化された際に、この短編だけ読みました。
調べてみると2006年2月ということで、8年前ですか。
今回もドラマを見て、この本を選んでいるので
自分の単純さを笑いながら、
次は先日ドラマが放送されていた「死の発送」を読むのだと思います。

前回は、指しか読まなかったのですが、今回は全作品を読みました。
興信所の「調査報告書」、交番の巡査の「証人訊問調書」、
保険会社宛ての私立探偵の調査報告書、医師の「死体解剖鑑定書」
といった様々な文書を読ませます。

通常、本の文章というのは、その世界を表すものですが、
この本では、本の中で更に、書面を読者に読ませることにより
読者が等しく、その書面を手に持って、そこに描かれた世界に
空想を膨らませるという図式になります。

前回、8年前指を読んだ時はチワワのことを「シーワワー」
と呼んでいる事のインパクトに気を取られていたのですが、
今回はとかく潤二の間の悪さよ!

なぜ、そんなタイミングでその選択を、と思ったのですが、
これが実はすべて計画的なものであったら。
自分の父親に関する暗部の関係者である弓子に
合法的に復讐しよう、と思っていたら。
そんな想像もさせてしまう短編でありました。

3億円事件は、やはりこれも警察のお偉いさんの親族が
悪いことをするという推理。
警察が本当に正義の組織であれば、解決できた事件なのかなと
悲しくなる話でありました。

次は、これかなあ

<松本清張の本の記事>
まだ狭い世界の、松本清張。 「或る「小倉日記」伝」松本清張 角川文庫
ドラマ見た方も楽しめる 黒い福音