書けなかろう、と思うような暗部が書かれる「謎の毒親 相談小説」姫野カオルコ 新潮社
姫野カオルコ先生といえば、ツ、イ、ラ、ク ですよね皆さん。
この印象が強いのですよ。
そんな姫野先生の作品。こちらもインパクト強かったわ!
文容堂書店のおかげで、なんとか成り立った
相談をして、回答が得られる、それが双方書面で、という形を取っているこの作品。
いやそうですよ、これが直接会話になりますと、つらい。読んでるこっちもだし姫野先生もお辛かろうよ。
だってラストにびっくりするコメントがあるんだもん。
その情報を事前にチェックしての読書だったわけですが。
緩衝材ないと想像するだけで、これを直接聞いている人がつらいと思う。
辛い、共感できるのがつらい
そして読んでいて出てくるエピソードにああわかる!わかってしまうのがつろうございます。
自分の衣食住の代金を支払ってくれている人のことを、パパ、ママなどという軽々しい外来語で呼べず
P77
いやまさに!自分の衣食住の代金を支払ってくれる、それについては感謝の念を抱かないといけない存在であり、それゆえ私は小学校3年か4年のころに私はこの家の居候だと思おう、と決めたわけです。
世界名作劇場の小公女セーラの気持ちでいたのですから、そこはヒカルちゃんに比べるとお気楽なものです。
まぁそうやって、居候の存在だと思うようにしてから早20年以上経っているので、早気持ちはかつて下宿させて頂いたご夫婦、くらいのものですね。
この本を呼び水に、出てくる出てくるエピソード
過去の嫌な思い出はこの小説のようにふと自分の中で疑問やら憎悪やらが湧き出てしまって困ることが多々ありますが、距離を置いてからは新しい嫌なことが増えないので幸せです。
ヒカルちゃんも
主目的は「親から物理的に離れること」なのです。主目的を見失わず、確実な手段をとるべきです。
P300
と言っていますよ。
これは専門家から言われていることもあって極力心がけていることなのですが、なかなか普通の人には理解してもらえない。
そんな中いい対策案ができました。「会うたびに万単位の金せびられるから嫌なんですよー」って笑顔で言うとみんな食い下がる、っていう最近の発見です。「弟は0円、私は500万円以上払ってきたんですー」って追い打ちかけると効果的。
それでも自説を押し付けようとしてくるイイコチャンとはこれまた物理的に離れた方がいいぞ。
あと
彼女自身の安らぎとして、私にというより、自分が産んだ子が、「生まれつき数学が得意で体育が好きな子」であることを、夢見ていました。
P127
あるあるー!あるよね。母親の夢のために弟は剣道をやらされることとなるのですが、これが父親譲りなのかリズム感皆無で、剣道の素振りもうまくできずにかわいそうだった。それでも1年以上?続けて、続けさせられていたのか。
まさに自分の夢を押し付けることに対して何の違和感も感じていない人です、今もなお。
そこから自分のエピソード書いたものの、時間が経ったらやっぱり消しちゃった。出すのもなぁ、という気持ちに読み返すと思っちゃって。と思うような暗部がこの本にはまさに「謎」というかたちで書かれています。
そして、本当に謎なのです。答えがわからないという、フィクションなのにノンフィクションな感じ。
しかし、この異常な環境あっての姫野カオルコなのである、と納得したところもありけりで。
好きです。
7月26日読了
ヒロセマリでした。
参考記事
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