若者無業者のコストに震える「無業社会」工藤啓 西田亮介 朝日新書
新聞で西田亮介さんの選挙に関する記事を見て、その文章の内容とあらイケメン、と顔写真を見て本を読んでみることにしました。俗っぽいですね、ヒロセです。
著書の中で私の読書テーマに即した本がありました。
無業社会。
若者の無業者、というものにフォーカスを当てた、「育て上げネット」というNPO法人の理事長と社会学者による共著です。
構成
若年無業者への誤解→働けない、働かない人のケース例→誤解に対する実情→社会に対する話
という形になっています。実例や、疑問に対する答えをNPO法人の活動から出てくるものが前半にあり、後半に働きづらい日本になった理由、そして無業者が国に与えるコスト。そのような流れになっております。
すべり台社会のニッポン
冒頭、人間関係・社会とのつながりをなくしていく若者無業者について「すべり台社会」という呼称を紹介しています。
いったん、何らかの事情で「正規ルート」から外れてしまうと、そこから先、下げ止まらない様子をそう呼んだのである。
P24
はいこの下げ止まらない感じ、つい先日読んだ「報われない人間は永遠に報われない」じゃないですか。(参考:私なんて女とダメ男を超越した無男。「報われない人間は永遠に報われない」李龍徳 河出書房新社)
わたしも、今の自分が様々な関門をなんとか通り抜け、かつ、滑り落ちずになんとかいるという実感はあります。
冒険しない若者なんていうけど、今の日本では冒険した時のリスクが高すぎるよね、ニッポン!!
若者が離職する・就職できない要因を考察
7人の若者のケースが述べられる章。
そこからキーワードをピックアップし、どうしてこういう状況になるのかを考えてました。
ブラック企業、それは激しいシフトの居酒屋だったり、介護職、不動産関係であったりととにかく労働時間が長く、その労働時間に金銭が結びつかないものが多い。
先輩・上司の暴言で心も体も傷ついていく若者たち。そこには友達・同期といった同世代の人間は出てこない、もしくはポジティブな存在として現れない。
その環境で適応している若年無業者と同世代の若者も居るはずで、その二者間の差異というのは何なのだろうか。
コミュニケーション能力、というのがここにも出てくる。
自分が思っていることを相手にうまく伝えることができず、極度に緊張してしまったりしゃべれない人たち。それは最近読んでる本で出てきた通りですが就職活動の不採用が続いていくと、時間を取らせるのが申し訳ないという理由で、就職活動を辞めてしまう人たちが結構いることを知り驚いた。
レジリエンスとか、アサーションとかがはやっちゃうのも、その部分が弱いと会社の仕事で不利になる、どころか仕事に就けない人が多いからだなと納得。
夢のレベルを下げれば、そんなにお金を使わずに生きて行けるのか
この本でも、無職でも日常そんなにお金を使う事は無いという人のエピソードが。
「インスタ映え」とか無縁に生きてれば、そんなにお金を使わないものなのか。
東京圏を離れれば、家賃も下がるだろうし、外食、中食でも方法によっては金額がかさまないのかもしれない(栄養価はさておき)
それは「「自由」はいかに可能か」という本を読んでから自分の頭の中に出てきたものの見方で、幸福になるために、夢や目標の方を変えるというアプローチ。
同世代に対するつながりが希薄になれば、見栄っ張りな部分もいらないわけで、生活の贅肉がそぎ落とされていく。
ただただ、孤独だし、経済活動は回らないと思う。製造業や文化・エンターテインメント業界は先細りになっていくこととなる。
ノンコミュニケーション、自由な職場ができていくのか
今いるバブルまでの世代が一掃される頃には、日本の会社の様子も異なっているのではなかろうか。
それは缶コーヒーBOSSの新しい風が吹くCMのような感じなのかしらん。
周りの空気を読んで生きていくことにドロップアウトする人が増えて、それが問題になっているのであれば、コミュニケーションがいらなかったり、人煩いのない職場が創成されればいいのではないか。
そう思うと、みんなとの同調圧力に屈さず、自分の主張をうまくできるようにして、学校はそこそこに大人とのコミュニケーションを取れるようにしていった方が人生うまくいくかもね、なんて自分の経験を元に、思いました。
自分が就職するときも、社会に出てからも、役に立ったり人に笑って貰ったり印象に残ることができるのは学校を飛び出して大人とやりとりをして作った体験が大きいと感じているからかしら。
若者無業者のコスト
後半は一転してマクロの視点で社会・政策の問題からアプローチしていく。
冒頭、すべり台社会という言葉が出たが、
城繁幸は、一連の著作を通じて、高い水準の最低賃金水準や、厳しい解雇規制が、かえって雇用主体の国内雇用意欲を既存しかねないことを指摘した
P152
いやもう本当ですよ!何十年前の貯金(といっても、バブル期前で簡単に入れた)で今本当に役に立たないのに解雇規制があるから首にできないメイワク社員がいる中非正規の有能な人材が切られていくのを何度も見て、日本は本当に入るときのみしか頑張りを評価しないから、大学も会社もあれなんだなぁと思うあれね!!
しかしながらそんななぁなぁな戦後のこの体制、わたしが定年を迎えるころまでもつのだろうか。
その答えは戦後田中角栄の日本列島改造論に。
福祉は天から降ってくるものではなく、外国から与えられるものでもない。日本人自身が自らのバイタリティーをもって経済を発展させ、その経済力によって築きあげるほかに必要な資金の拠出はないのである
P166
そんなバイタリティーないよ若者たちに!
以上。ということで、年金制度は破綻するだろうからそれ以外の自分で行っておく確定拠出年金などでどこまで貯めて行けるのか、というのがポイントになるかしら。
でね、自分はまぁなんとか生きて行かないとなぁと思っているのですが、今すでに働かずにお金がない人たちが年取ったらお金がかかるんです。
それが、2006年時点の未就業の若者483万人。この潜在的な対象者1人に生涯1億ずつ払ったら483兆円というコストに。
国のコストを減らす、という観点からも若年無業者に働いてもらうことは意義がある取り組みという事なんですね。
マクロ・ミクロの視点から、思索出来る本
やっぱり読むと日本お先暗いなぁという本ではありますし、自分の防衛策とかを考えちゃう小さい女ではありますが、こういう事が起きていてこういう若者がたくさんいる、ということを知っておく。理解しようとする素地があることは、悪くないことだと思います。
まだまだ、読んでいきます。
10月22日読了
ヒロセマリでした。
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