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最後の1ページで号泣。「小さいおうち」中島京子 文芸春秋

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ここのところ読んでいる「小さいおうち」特集の一環で読みましたが、この本を読んでも自分の家を小さくして暮らしていくことの参考は載っておりません。

しかしながら、この本を読んで良かったと思いました。

この本のことを知ったのは、松たか子さん主演で映画化される、と知った時。
松たか子さんが好きなので。

はて、なぜ直木賞受賞の時のことを覚えていないのだろう?と思い調べてみると、
2010年の上期は芥川賞受賞の赤染晶子さんは「初子さん」を読んだことがあるの知っていたこと、そして何よりも鹿島田真希さんが落選したことしか印象が無かったのです。あの頃はニュースで結果を見て、ああまた鹿島田さん!と思うのみ、でした。

ということで中島京子さんの作品を読むこと自体初めてでございます。

第一章を読んでいる時に、引っ張られる思いがして、これは面白いな、と感じました。なんでだろう?と考えると、現在と過去とがないまぜになり、過去の思い出の話が映像が見えそうになるほど委細にかたられる中、ふっと背中を引っ張られるように現在になり、健史が突っ込んでくるからなのかな、と思います。
良いところなのに健史がまた水を差して!と思うことで、早くノートの続きを読みたくてうずうずしてしまいました。

もう物語が終わってしまうのが辛いな、さみしいなと思う中、最後の見開きのページのある一文で号泣です。文中わかってはいるんだけど、痛いくらい伝わってくるんだけど最後に健史のことばとして出てきたことで涙が溢れて止まらなくなりました。
次の行の恭一の言葉はいらなかったか、と思いましたが、実際にその場に居たらそう言ってしまうよな、とも思います。

このページを読んで、第五章での睦子さんとのやり取りが浮かんできて、睦子さんの第三の道と、そしてタキの第三の道-それは戦後ずっと続いたもの-を思い、胸を締め付けられるようです。書いている今も、涙が浮かんできます。

板倉さんの紙芝居の中で、顔を互いに近づけて、幸せそうに手を握る二人として二人は永遠に幸せに、一緒に過ごしている。
それはなんという幸福なことなんだろうと思います。その画が浮かんできて、それは私の心の中のどこかに仕舞われたと思います。

タキさんは、いちばん頭の悪い女中か、並みの女中か、優れた女中だったのか。
最後に種明かしされたあの判断・行動は、女中ではなく女だったんだのでは、と私は思っています。
ここは読んだ人によって判断が分かれるところでしょう。そこが面白いところですよね。

<小さいおうち特集>