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悲劇や事件がぴたりとはりつく欲望とは 「理由」宮部みゆき 新潮文庫

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何十年ぶりに読んだことでしょう。

高校時代に単行本で読んでいる、おそらく99年から2000年にかけての時期に。

思わず、当時の読書ノート開いちゃいましたよ。1999年8月15日から9月2日にかけて読んでおります。

時間がかかっているのは並行してぼくは勉強ができないと柳美里さんのタイルを読んでいたからか。この頃から私の並行読書はあったのね。

高校の図書室で夏休みの間に理由を借りておいて、あと2冊は地元自治体の図書館で借りたのでしょう。

今回はね、2日で読んじゃった。止まらなかったー。学生時代よりも今の方が自分の時間を取ってしまえば集中できると当時のことを振り返って気づきましたな。

今本読んで、夢中になると1週間以上家事をなおざりにして読んでるもんね。先日の宮尾登美子フェアの時(参考:4月から5月の私。本を出したり、本を読んだり。)も3,000ページ勢いで読んでたし。

いや、楽しかったわ理由。

当時は片倉家の少女やら康隆の年の頃だったはずが今いちばん雰囲気的に近いの、葛西美枝子さんだもんね。当時全然印象に残らないキャラだったよ。

ストーリーを間違って覚えてた

死んじゃった4人がもっと家族としての契約をしてハートフルなやりとりしている描写があった気がしたけど全然そんなことはなくてびっくりした。

競売物件がまつわるってことが頭からすっぽり抜けてたよ。物語の核なのに!

競売物件というと、その後女たちのジハード読んでそっちの印象強くて上書きされて消えちゃってたな。これは面白くって、20代後半か30前に読み返したのだった。

理由に近い感じだと練馬一家殺人事件をモチーフにした野沢尚さんの深紅かな。こっちは事件プラス、加害者遺族と被害者遺族の話になっていくのです。

理由の方は競売、占有。それの法律と穴。そこにまつわる多数の家族のエピソードをインタビューというかたちで組み合わせて組み合わせて組み合わせてつくられています。

火車との類似点と、物語の広がりと

わたしの大好きな、これを読み終わってそのまま引き続き2日で読んじゃった作品、火車

火車はクレジットやローンというものに踊らされた人たちの話で、そこに法律のパートも結構出てきます。今回も家というもので自分を過大評価した結果めちゃくちゃになってしまった家族のことが出てきます。

あんなとこに住んだら、人間ダメになる。建物の格好よさに調子を合わせようとして、人間がおかしくなっちゃうって、そう思いました。

P585

2017年の今なら家に対してそんなことは思わなくってぴんとこないかもしれません。ただ今この文章をちょっと変えて、

「インスタグラムに素敵な写真を載せるために、WEBに映る格好良さに調子を合わせようとして、人間がおかしくなっちゃう」

ってしたらまさに今でしょ。いつの時代も変わらない虚栄心、見栄や自分の心を満たすためのもの

自分まわりの「見栄え」を良くしようとする欲望に、悲劇や事件がぴたりとはりつくのは今も昔も変わらない、と襟を正す思いに。

登場人物が火車よりも多くて、小糸一家に加えて宝井一家、石田一家、そして砂川一家と様々な家族の話を聞かせて、事件の夜の真相へもっていく力はお見事の一言に尽きます。

ぞっとする、孝弘の言葉

読んだ当時は中学生に自分が近くて感じなかったけど、30代になって読むと後半のこの孝弘のインタビュー、言葉が大人たちに強烈に突き刺さるんだなぁということがわかりました。

彼も八代のようになってしまう可能性がある。家庭不全が、異常な性質の親の影響こそが、やがて大きな事件を引き起こす萌芽なのだと。

この事件をきっかけに、親から距離を置くことで孝弘くんの未来がよい方向に修正されればいいのだけど。

最後の理由に、にやり

最後、新潮文庫用のあとがきということで宮部さんがなぜ、新潮文庫で刊行したかという「理由」が。

それが私にとっては「わかるー!」というものでしたので、宮部さんかっこいいなと。粋だなぁと感じました。

気になっちゃった方は、ぜひ新潮文庫版を読んでみてください。


理由 (新潮文庫)

7月10日読了

ヒロセマリでした。

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