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敢えて書かないことで、登場人物の人生が深く自分の中に根付く「火車」宮部みゆき 新潮文庫

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これはね、数年に一回読み返すの。700ページ近くあるのにね。夢中になるのよ。

理由読み終わって火車読んだら1,500ページですよ。何やってるんだか。でもいいの、本読んで夢中になれるって幸せなことですよね。

だってこの中に出てくる人たちはそんなことが難しい人生を送ってきたのだから。

ただ、幸せになりたかっただけなのに

人探しの話です。

消えた女性、名前も、顔も数年は消えたその女性には借金で自己破産の過去が。

そんな彼女は「ただ幸せになりたかっただけなのに」会社も追われ、体を壊し、水商売をしながら、自己破産を行っていた。

80年の終わりから、90年代にかけても、東京での一人暮らしの大変さはあり、そこで自分の幸せをいっときでも与えてくれるのが、キャッシングだった。

学生時代に読んでおいてよかった本

思わず件の読書ノート(参考:悲劇や事件がぴたりとはりつく欲望とは 「理由」)また開いちゃいましたよ。

2006年の7月に読んでおります。この時も2日で読んでるわ。そうよね止まらないわよね。この時は2週間で宮部みゆき6冊読んでみるという宮部みゆきフェアの時でした。

でも圧倒的な影響を残したのはこの火車だった。

社会に入る前に、お金を借りて物を買うということの恐ろしさ、リスクを痛いほど実感できる本でした。

今やポイントマニアとしてクレジットカードでえらい額買いますけど、自分の支払えない世界には行かないように目配りしてます。それもこの本のおかげ。

ただ、幸せになりたかったもう一人の引力

上に出てきたセリフを言った子は実は主役ではなく、本当に探される人は別にいるのです。

言ったらもったいないところなのでなるべく隠しながら書いてますよ。

彼女も、彼女こそただ幸せになりたかったのです。この人の人生は、凄いわ。恐ろしい。そんな彼女に読んでいくと引き込まれ、一体どんな子なのだ?とページが止まらなくなってしまうわけです。

書かないことの力

何が怖いって、彼女が嫌いなものの描写が出てくるんだけど、それが何によるものなのかの記述がないの。

なんかすごいことがあってだめになったんだろうけど、それは何なの!?絶対壮絶な、そのエピソードを書かないことでまさに筆舌に尽くし難い何かが、彼女にあると痛烈に私に乗せてくるんです、宮部さんが。

これがすごい。全部書くことが小説でなく、敢えて書かないことで、その登場人物の人生が深く自分の中に根付くんだなって、この作品で知りました。

そしてそのラストも、絶対そのあとの話を書いても楽しいだろうに、一番息を呑むところで緞帳を下ろされるのです。

だからこそ10年以上、私の心を離さないのだろうな。

また、読みます。本当におすすめ。


火車 (新潮文庫)

7月11日読了。

ヒロセマリでした。

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