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これ戦前の話?!と思うくらいの村人っぷり「狗神」坂東眞砂子 角川文庫

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名前だけは高校時代からずーっと知っていたこの本をようやく読みました。

映画の試写会のおもいで

何で知っているか、と申しますとこの本を原作とした映画の試写会に当たったから。


狗神

これの同時上映が、弟切草。

弟切草

サウンドノベルというジャンルがありまして、そのジャンルを開拓したスーパーファミコンのソフトが原作。

で、私はそのサウンドノベル2作目の「かまいたちの夜」が大好きだったの。

人間はみんなシルエットで出てきて、長野のペンションを舞台とした文字情報と、あとは音楽が流れる中、選択肢によってストーリーが変わっていくもの。

全パターンためして「ピンクのしおり」つくりましたがな。

このかまいたちの夜が好きなばっかりに、弟切草のことは何にも知らずに試写会に応募したのだ!そして当選したのだ!

その同時上映が「狗神」。天海祐希さんが今ほど大女優!というポジションにいたわけでもなく、研音所属前、ということもあり結構セクシーな感じな映画であるぞという情報を入手してしまいました。

これはまずいと。私、当時中学生の妹といっしょに行くということになっており、家族とそんなやらしかシーンは見れぬと。

そこで策を講じましたよ。

狗神上映からの弟切草上映でしたので、学校帰りにまずTVの音楽番組の観覧をして、それから映画館に行くという。

学校帰りと書きましたけどそれちょっと嘘で、もはやその日学校さぼってたかもしれないな。妹はともかくさぼりまくる高校生だったので私は。

無事、映画館につくとちょうど弟切草が始まるところでしたよ。セーフ。そんなこんなで狗神の話は全く知らず、天海祐希さんがトヨエツと濡れ場がある印象でした。

しかし調べてみたらそれは映画MISTYの方でした。あらやだ勘違い。確かに小説読んでて、印象が合わないなートヨエツじゃと思ってましたよ。

そんなほぼ無の情報で、読みました。

高知の、女の強さを感じる

宮尾登美子さんの本でも感じる、高知女の強さをこの本でも感じます。

主人公未希の母親の胆力よ。

ラストの方まではそれがわからなかったけど。

空は近いけど、世界は狭い

古めかしい、高知の中でも田舎の集落の方を舞台にしていまして、その中で和紙作りだけを楽しみに生きる、何かを捨てた、諦めたような未希。

そこに中学教師が赴任してきたところからはじまる、ラブストーリーであればいいのですが、ホラーです。ミステリーです。

土着、というまさにねっとりとするような狭いムラ社会で起こる奇妙な出来事。

徐々に明かされる、未希の過去。

四国を出たこともないという、未希の生きる範囲は、とても狭い。そこに出てくる人たちも、高知の方に出ている家族の方が少ないという感じで、みんなこの集落で生きていく。

坊之宮家はその土地の大地主なのかな、と思っていたのですが徐々に俯瞰していくと、村の中での立ち位置というのが見えてきて、それがやがて大惨事へと。

え、これ戦前の話じゃないのよね?!と思うくらいの村人っぷりですよ。きっと設定は平成なのでしょうけど、村だけは時代が違うよう。

初めの秘密がわかると、二つ目の秘密に気づいてしまった

未希が隠したかった秘密について、まぁ一般的に隠したいのはわかりますが、その後村人のセリフにより、なぜそこまで秘密にしたいのかがわかる事実が。

そのパンチの強さと、それだけに、この登場人物からするとこうなんじゃないか?という推測が。

そしてその通りでした。

すごい女だよ未希。

で、ラストも2ひねりくらい起こって、ラスト角川ホラー!って感じだけど、そこまで二転三転しなくてもなぁ、というように個人的には思いました。怖いけどね。

夏の夜に読んじゃったら眠れなくなるかも。

7月26日読了


狗神 (角川文庫)

ヒロセマリでした。