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読むべきタイミングで読めた本。「忘却の引揚げ史 泉靖一と二日市保養所」下川正晴 弦書房

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夢中になり、また、深く考えさせられる本でした。

忘却の引揚げ史《泉靖一と二日市保養所》

きっかけは、新聞の書評欄。それが夏だったはず。

読書前に補足される二日市情報

本を読む前に、私「二日市温泉行こう」と思ったのでした。9月のことです。

TBSで「友達+」という番組で福岡特集があり、二日市温泉に日帰り300円で入れる温泉がありまして。

福岡最古だったかな、その温泉地、行かないとと思いました。

本を読み始めて、つながる二日市、福岡情報

この本の主題となっている二日市保養所、その跡地が今特別養護老人ホームになっていてお地蔵さんと記念碑が立っているとのこと。

ここが、私が行きたいと思った日帰り温泉から、300メートルもないのです。直線距離で150メートル。

ここで私の興味、からこれは温泉に行く際に立ち寄らないといけない、という思いに変わりました。

ここで何が起きたかというと、終戦時、朝鮮・満州で暮らしていた日本人が引き揚げに際し、ロシア兵をメインとした男たちに暴行を受け、性病・妊娠した人向けの病院があり、治療、中絶を行っていたのです。

ここ二日市保養所のために奔走した泉靖一、引揚者について、そしてこのテーマについて映像化・書籍化したRKB毎日放送ディレクター、上坪隆について取材・調査した本になります。

ここで出てきますはRKB毎日放送。私先週末RKBラジオまつり行ってますからね。

特に上坪さんの映像を描写する第八章には夢中になりました。RKBで見られないものかしら。よくRKB放送会館行くのでそんなことを考えます。

視野を広く、複雑な事実をとらえること

この本に感銘を受けたけど、それだけに気を付けないといけないのは、この本でも繰り返し書かれているけど、この本をうのみにするだけでなく、ほかの文献にもあたっていくこと。ということでここに出てきた本もまた、読みたいと思います。

 証言を取るのが難しくなると、あとは伝承が問題

この本が出ているのは、忘れられないため、という問題提起もあってのことです。

だからこそ、こうやって私も記事にして一人でも多くの方の目に入るようにと思っています。

冒頭、2010年に朝日新聞の記者が引揚本の著書に対して

炊き出しや医療、寝具の配給があるはずなのに、なぜ多くの犠牲者が出たのか
P26

というトンチンカンな質問をしたというエピソードも書かれています。

裕福な平和ボケおぼっちゃん記者にとって、平和に暮らすための条件は当然のものとしてある、あって当たり前のものなんですね。余りにも無知すぎる。

マスコミの人間がこうなのです。

目にするもの、それをネットや新聞やらいろいろありますが、一冊の本を出すために多大なる労力を必要とするこういった著書に当たること、経験していなくても経験を文字から少しでも感受することの必要性を改めて感じました。

読みたい本メモ

水子の譜(うた)―ドキュメント引揚孤児と女たち (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)

軍隊慰安婦―戦争と人間の記録


戦後引揚げの記録


慰安婦と戦場の性 (新潮選書)


帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い


生きている兵隊 (中公文庫)


ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)


隠された日本 博多・沖縄 わが引揚港からニライカナイへ (ちくま文庫)


忘却の引揚げ史《泉靖一と二日市保養所》
10月25日読了。

ヒロセマリでした。

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