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「朽ちていく」とは?人間の体とは、DNAとは何なのか。克明に辿る83日の記録から目を逸らすな。「朽ちていった命 被爆治療83日間の記録」NHK東海村臨界事故取材班 新潮文庫

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1999年、この事故を知っていたはずなのに、何もわかっていなかった。

重大性が、全く分かっていなかった。「りんかい」って言ったら大井町とお台場をつなぐ、否、当時はまだ天王洲アイル止まりだった「臨海」の方だった。

「臨界」が人間に何をもたらすのか。

冒頭、「被ばく量 8Sv」というメモについての説明がある。

8シーベルト以上の放射線を浴びた場合は、致死率100%。

最終的に大内の被曝量は20シーベルト前後とされた。

P22

この言葉で戦慄する。100%死ぬ、というデータの元で、医師たちのまさに未知の状態との闘いの記録が始まっていく。

私は学生時代からDNA、遺伝子の単元が好きで、中学時代に高校の生物の単元分自力で本を読んでた感じなのですが、人間にDNAがあるのは当たり前!染色体に異常があるとダウン症になる、くらいのものしか知らなかったのですね。

その前提が、顕微鏡写真でぶっ壊されるわけです。

驚くことに、最初、見た目には全然、被曝しているとわからないというのです。話を交わすこともできる。

人間の設計図である染色体が破壊された人間がどうなるのか。

そこから、医師・看護師へのNHK取材班による体の変化が刻々と刻まれていきます。

というか、最先端治療を力の限り行っていくため、「モルモット」と言われるほど、さまざまな検査などが続きます。半日全く休めないとか。

そんな日々の中、皮膚が、粘膜がどんどんなくなっていく。1日、数リットルの水分が、下痢が出ていく。

会話することも、途中からできなくなります。他者と交流することが出来なくなりますが、神経は、朽ちることなく保たれるために、痛み苦しみの知覚はずっと続いていたようなのです。その点が、この治療を振り返るうえで、さまざまな意見が出るゆえんだと思っています。

それが対応した看護スタッフなどの考えを聴く、「折り鶴 未来」という章で明確に表れる。日々、大内さんの対応をしていたスタッフ一人一人、感じることが異なり、それが深化していき、真逆の感想を生んでるんですね。

それがこの問題が解決していない、答えのないことなのだ、ということを私たちに突き付けているように思えます。

ここにいる人は何なんだろう。だれなんだろうではなく、何なんだろう。体がある、それもきれいな体ではなくて、ボロボロになった体がある。その体のまわりに機械が付いているだけ。

P129

これは、SFの紹介ではありません。事実、2000年を間近にした日本で起きた話なのです。

この本を読んでない人に、読んで頂きたい、そんな一冊です。

NHK報道局科学文化部の岩本裕さんが中心となって書かれた本。あとがきを見ると薬害エイズ事件を担当し、その後この事件を担当されたとか。

薬害エイズも、改めて、知りたい。何かに触れると、知らないこと、知りたいことだらけです。

12月14日読了

参考文献

巻末にあったものから、優先的に読みたい本を。

法医学事件ファイル 変死体殺人捜査 三澤章吾(司法解剖担当)

柳田邦男さんの巻末より抜粋。(柳田さんの文章自体 人生の答えの出し方 の中の評論の抜粋)

青い閃光ードキュメント東海臨界事故(読売新聞編集局、原子力行政の問題点など)

あの日、東海村でなにが起こったかールポJCO臨界事故 粟野仁雄

 

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