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事件を、ライターとしても書き、そして被害者としても書く。「生きてみたい、もう一度」杉原美津子 文芸春秋

新宿西口バス放火事件。

申し訳ありません、知りませんでしたこの事件。
なんかWikipediaで発見して、なんだこれは!と本人の本を読むに至りました。

1980年の夏。

新宿駅で燃える新聞紙とガソリンがバス中央の開いた扉から投げ入れられ、バスが全焼。

5名以上の方が亡くなり、また重症患者は一生治らない傷を負うことに。

著者の杉原さんも体の80%以上を火傷して生死のはざまをさまよいます。

そんな杉原さんの事故を知らせる新聞記事。
燃え盛るバスの写真があるのですが、この写真を偶然撮影してスクープを取ったカメラマンは杉原さんの実の兄。

ドラマより奇なりな現実。

そして本を読んで驚くことに、文章が、ただの被害者ではないのです。
フリーの編集者であったのですね、杉原さんが。

なので、ノンフィクション作家の本のような文体で進んでいきます。
自分自身の事件を、ライターとしても書き、そして被害者としても書いているということでも貴重な本だと思います。

ただ、自分は被害者ではないと繰り返し述べます。
そこには、彼女が炎から逃げあぐねる事情があり・・・

そこは読んでくださいませ。

非常に重たい、でも読むと止まらない本でした。
そして読み終わった時、彼女の激動の人生はまだまだ続くのだ、と辛い思いで瞼を閉じました。

すぐに、もう一冊の本を読みました。

一度、読んでみてください。

11月28日読了