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今の日本で生きる自分の生と死を考え、20世紀に想像した未来を思いだす 「百年法 下巻」 山田宗樹 角川書店

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400ページ強をやっぱり一気読み。

大統領指令ゼロ号がやっぱりしびれたね。

そこにしかけておいたか、と。

最後は、宗樹作品にしてはするっときれいにまとまりすぎている感は
あるなと思い、そこは立花さんの話が直接的に書かれていないことで悲劇感が薄れているからかな、と感じました。

上下巻合わせて800ページ強に渡るボリュームだけど
あれこれ削ったうえでまとまった作品なのでしょう。

不老不死になり、「いつまでも生き続けることができる」ということは
「いつまでたっても生き続けなければならない」ということで
その事実に耐えられず作中多くの人が自殺、他殺で命を失います。
また、余命が法律で定められても辛いのは第二部の終わりで
痛いほど伝わってきました。

事件や事故で自分が死ぬんだな、という意識なく亡くなるのは、
自分は良くても周囲の人間にとっては辛すぎるし、
などといろんな条件を浮かべ

「自分にどのように死期が訪れるのだろうか」
「自分に死が期限付きで訪れた際、
最後までどう生きることが出来るのか」

ということを考えずにはいられなくなる本でした。
今の日本で生きる自分の生と死を考えさせれる本でした。

楢山節考であったり、筒井康隆の定年食(メタモルフォセス群島収録)
であったりの20世紀の作品を見る限り、
「今後、日本人増えすぎてしょうがない」
という未来が来ると思っていたのですが
21世紀も10年過ぎて、労働力不足が明るみになってくるとは。

「牛丼チェーン店が24時間営業出来ない」
「ファーストフード店に老人店員を数多く配置」

というニュースに接すると、未だに車が空を飛ばなかったり、
雨の日は傘をささなければならなかったりすることと同様、
20世紀に想像していた通りの未来には
なかなかならないものだ、と思う次第です。

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